烏の軽い羽根一枚
うらりたちなり踊るるも
煙草の灰の一陣や
のらりうらなり掃き流る
皮膚につもれる塵芥
ともに流れて吹き飛ばん
己がこころもともに去り
皮膚に流れる欺瞞の血
ともに流れていねさりぬ
 まてど来らぬすがたほし
 欠くる胃袋あがないを
 求めふくらむアルコール
 蝶のすがたもみえようか
 酩酊活性幻覚の 
 作用もろもろ犀の角
いかで木石に心あらん
うらりたちなり眺めるも
おのが姿に嘆息も
するも能わぬ忸怩たる
思い甲斐なしこの皮膚に
つもれる塵の厚みたる
血のあがないで流し去る
ことも能わずいねさりぬ
すべて流れてさりぬべし
名誉とは
己が胸にて守るもの
外聞体裁無面目
何ぞ関わりあらんやと
今は昔の不風流
流せ聞かせや風に乗せ
どうせ結べどとく消えん
むしろ汚辱をみすえれば
下卑な嗜好の過ちも
善の門番務むべし
胸を預くる象徴派
シュルレアリスム欧化趣味
権威の門番務むべし
トタンの錆の朝露は
だらり縁側身を寄せて
ざんばら白髪の古畳
経は膝先首に汗
額の皺に蚊がとまり
ぐっと飲むのか一杯を
それともテレポーテーションか
額に生えるホースから
毎度毎度のお客さま
出迎え馬車を演じるや
門入のカビは御愛嬌
彼はジャンクな時計食い
坊主の若さを代価にし
手にする品は破れ布団のすすけつき
足組みするに開口し
「ああ本日も夜となる」

審判

2004年7月14日 明晰な口語詩
ひとり法廷に立たば
裁く者あらずひとり
不毛の答弁は告発に
告発はぬるみぬ妥協へと
自ら我を裁く我
我は我にぞ裁かるる
恵みに飲み干す水は鞭
肌に食い入る鞭なるに
鈎刃の痛みわれもなし
鞭で裁きの終わるなら
血の一陣も流そうぞ
蛇も陽気にとぐろまき
餓鬼の首根と戯れん
血似(も)て煩悩欺くは
まこと根深き煩悩よ
鐘を鳴らして耳聾し
などて毒矢の抜かるるや
ひとり立ちたる法廷に
裁きの主求むまじ
まして購う担保など
何ぞ乞わんや思わんや
己が悪こそ購われ
よそへ罪をばなすりつけ
何ぞ喜悦を覚えんや
我は受けたる我が裁き
悪は悪よと身に受けて
ひとり歩まん犀のごと
西国イラン行きたやな
風うまざけと逢瀬して
詩(うた)になりけり頬染める
西国イランのぞみたや
背(せな)に鞭打つ祭りでは
歩みのまえにおのこども
床屋で髪切り髭そろえ
意中のチャドルに目を注ぐ
我も混じりぬそが中に
欧語通じぬ常とても
髭をたくわえ歩まばや
西国イラン行きたやな
タクシー転がすご婦人に
クルアン暗誦小学生
しどろもどろで怒られる
そぞろ歩きのバザールは
絵像禁忌の風よけて
聖者の似顔絵100リアル
吸うが難きの水煙草
いずこにいようか爆弾魔
西国イランのぞみたや
浄土ばかりが西でなし
欧州ばかりが西でなし
西国イラン行きたやな
(comme moi comme moi)

ほほ笑むモナ・リザ/悶絶モナ・リザ/抜刀モナ・リザ:ギョーム/アポリネール
絹糸製の攻撃性:ルイあらゴン
七色アウラは禁欲的:Antoninアルと−
淡色まだらで横笛を:ポール、エリュR
「神聖ジャングルは劇場も持ってます」:ジャック/オーでィベル手ィ
8ビートの吃り:レイモン苦悩
熟れる×柑橘×タキシード:じゃん×コクトー
一筆描きは工事中:フィリップSoupault
(発光する☆我が詩人):TRISTAN☆TZARA
行書体で花を生け:ロベールですノス
(ミニアチュールに小人さんが住んでます):&レ・ブルトン
荒野でパイプをふかす嘆息君:アンリ/見SHOW
アナーキー共和国の清楚な鍬:ピエーるるヴェるディ
そして向暗性のじょうろは焼酎を注ぐ:ロートレアモン伯爵イジドール××××

(comme toi comme moi)
老練されたリアリズムの櫛で梳く堅固な立方体を
熟達の呼吸と言語的舞踏で解体する白日の平原
彼方のオーロラは自ら切り裂く控えめな雨天を見る
そして我々は逃走を企てる
透徹した木炭のデッサンを半歩の英断で逸脱し
鋼鉄の我がまなざしを粉砕するもよし
星空に位置ばかり示す霧散を求めて
絶対なる顔の定立に地割れから花粉も飛び立つか
しかし死は有限の円周以外を知らず
存在の虚空を知ることは遂にない
散じた破片は一つ一つが唇から黄金と毒素を生やし
無数の小部屋が喧騒と和合を繰り返す
蒼天に開け放たれた扉を水仙がくぐることは決してなく
企てた逃走の挫折は世間よりもはるかに醜い
身体に発生する善の問いかけは密室との架橋に全霊を傾け
美と番う法悦を断罪することだろう
そして挫折に至る逃走を企て
位置ばかり示す彩りの霧散を求めるだろう
かげろうの羽に脈打つ幾何学の壮麗に捧げる
紅のようなおまえの軌道をわたしは恋い慕う
沸き立つ五臓六腑の汚濁も
粘着する体毛も大地から溢れ出す
溢れ出す光は鋭く夜空に寄生し
残骸の水仙を流水に託す
世界の線描を自ら背負い
混沌の心臓をもった楼閣の虫
靴には児戯と怒号もうずまいては流れ
ちぎれた原動の端緒を見るや座禅堂の鐘も鳴り響く
鐘の音に現る因果の振動は
連なる雌雄を決するにつれ
空気の裂け目からは水仙が乱れ咲く
無軌道に至る姿があなたのように
あたか農耕機を操るわたしのように
彼らのように撹乱され
なお悠然として世界を背中に飛び交うのだ
花のさくさくそれがしの国は斬り捨て御免に候へども
菩薩面でだらり
ピルのんでのそり
論語食しずるり
てな具合にそれがしの春は2B
ぐつぐつ煮込んだジャパン軍にならって
おっちらと克己復礼の2B
座禅でろんろん南無三宝と2B
サ−ビス修行に励んで2B/ノットゥービィー
シベリア出兵ならってこまるはクエスションとなりますが
常食としての米なのでこまるはクエスション
となれば艱難の海をざぶざぶとして
世の鉄拳をしのび
米不足に困じ中華にしてみる
露飲んでふんばってみる
ついでに仏にファンコールしてみる
「せきをしても独り」
てな具合にいずれがノーブルなりやと斬ってずば
ではこまるがクエスション
それがしの国は斬り捨て御免に候へども
稲作を慮って仙人修行も致して候
白む空が乳房を与える前
溢れる東雲の車輪に芳香をよじることがないように
乳房の先端が縛る赤々とした葦の胎児を行ずる

裾をたなびく燐光が川床を拭うにつれて
聖トマスの証が一戟に刻まれる
重苦しい元素のさざなみも宙を漂泊し
白む空の与える乳房を鳩に託して頼むは精練の因果なり
そして正義は敗北に悲しみの海を転がれば
一振が下した黒服の城門を母なる塵でまぶし囁き
告発の代価に純白の桃源郷を憂う

剣とともに与えられる聖トマスの証
それは一切を知らぬ女たちの優しい足音に溶け去り
鍛冶ならずとも娘の剣は海を貫く
かつての揺籃を身に受けた不正のゆえに不眠をかざし
 刻まれた聖トマスの証が成就の陽光に影を落とす

郷愁

2004年3月14日 明晰な口語詩
奥羽の背骨は伏せたる老体
顔面を覆いすなわち人払い
むせび泣きに湿った雪の手のひらは次々と咲き誇る艱難辛苦と舞踏するばかり
東のやませは線路の中に香る苦虫でありモダンの通過で雲散霧消の影

臨む背骨をわたしは思い出す 西のかつてに豪雪と酷暑の凪となった心痛があることを 
農民の手練は朝が掻き乱す井戸水の黒点と相違わぬことを
わたしはまた思い出す 広大な舌を持つ北上の唇と静寂のため息を 
それは柔和な信仰のように
伏せたる老体の悲嘆が青大将を木陰に閃き香る水音を成就することを
混じりあう無数の空気に植物性の優美が胸を開き舞踏を許して瞼を染めることを

たとえ人権の刃が牢獄を水平に爆破しようとしても
木々の貪欲な逆接の渦が柔和な信仰のように混沌と雪水を注ぎ
赤い空に無為の軌道を描くいなごの群れも
白色の眠りを無彩の権化に落下することはない
わたしは語る

震える背骨は夕暮れに遠く
存在論の形式さえも拒む夜の侵食に柔和を知るのだ
日記を書くことつまり言葉。言葉は純粋な結晶として記憶から免れる。記憶は曖昧模糊とした人生の過去であり、偶然の支配する各人の像である。結晶化した幾多の命題は一般化の試練を背負いしかもそれは生のイデアが落とした影にすぎない。しかしそこにおいて偶然性はもはや意味をなさず必然が偶然の限界に続く道筋であり、運命が稲妻のように閃くその輝きをおびている。綴られた幾多の抒情は、それはもはや叙事詩にいたることはなくただひらすらに一個の宝玉として各々の胸を飾るのだ。
つぼみゆるむ
 まだし まだし
道は揺れる
 おぼろ 見えず
メガネkaufe
 視界 ゆかい
魚卵つかみ
 飽くや 飽くや 飽くやややや
やややややや
やややややや 
  謂
がぶりと飛び込む月桂樹
かむりと倣う日本人
西の空には日も没し
没するところに煙あり
輸入の乾物舌をうち
のちに火傷で漢方か
火事もおきるわ地震国
「愛智」とふんぞり
マントル黒く
右往左往もハラの隅
西を拝んで東を威張る
鉄のカーテン健在ですか今もなお
「愛智」と呼んでも雪すべる
ギリシャもインドも西方ひとしく
東に行っても辿り着く
ロジック讃歌の大洪水
今日も西向きおがんで唾棄して
本屋を放る
100番代を頼んで投げる
そして拾ってまた投げて
学徒の戯れ今日もまた

オー

2004年2月21日 明晰な口語詩
わたしをとりまくこの言葉の群れは何なのか
世人の顎が星のきらめきで語る現象の諸要素と頭痛の神話
宵のかげりにひそむたおやかな風の手のしぐさは
 悲愴の太鼓が闘争にいただくサトゥルヌスの絶叫よりも傷口に朝を与える
無数の発光の中で爆発するイメージの川はもはや海に流れ出し
 大気のうねりを切断する水仙の誘惑に足をすべらせる
痛々しい点滅が言葉を愛する
雑踏の外からつれてきたこれらの元素と一つの言語は森を
 失い赤々と揺すれる炎のたおやかさに眠りを休める
そして太陽は水面を過ぎ去り
天文学的見地を誤謬の山に語り合い無数の中心部を一つ一つ膨張させながら優しげな韻律で円周を拡張する
その一点一点がわれわれの宝物庫であり鈍い光沢が捧げる苦行の痕跡は甘露となって空から注がれるのだ

腹を満たした森は眠りの壁に到達する
すりきれる弦の妙音にくつがえる紙と油
いくたびの予言のゆえ商売を疎かにし屋外からの観測を中止したことか
朝食にこだまするサトゥルヌスの舌
白日のせせらぎに鍵が下ろされ焦点もまたしかり
うごめく黄金が知りうる逃走が幾重にも滝となりわれわれが流れだすダムの奔流
語りつがれるこの群れは自然素材の詩人らに舌を与えるだろう
やがて閃く赤いソファは危惧の秩序を整え岩戸にひそむ宵のかげりを夜の洗礼で蔵を見つめる
そして起こる風が風が
絶えまなき先導者の残像にまきおこる風がもろもろのO(オー)をすりぬけ表皮を剥ぐ

身体

2004年2月18日 明晰な口語詩
諸々のイメージの分厚い堆積
慰めの歌はただ通過し
陽気な調子が微々として響く
日々のしぐさで忘却の影がさし
日毎の作法と交換により堆積する塵
ひとたび突風が吹けば剥離してただ残る実存
人称を持たぬ身体
認識にいたらぬ身体
意識を雲散する身体
かくしてコラージュは春一番を待つ
白い線香蒼天吸い込み天球は
頬をつねられおどろかれぬる
屋上行きの階段は
明かり点らず五日前
忘我に忘我数珠おちて
平にちりばる日没や
ひふみよいむな
 手まりつくよに
ひふみよいむな
 数珠拾う
夜の来る前赤い道
煩悶 凪の比等しかろ
ひふみよいむな
 段上がりつつ渇く様
ひふみよいむな
ひふみよいむな 風吹きぬ
黒々地面は渦を巻き
見下ろすばかりの反作用
諸々煩悩アラベスク
昂り感官アレゴリー
蛇のとぐろか 大脳か
皮膚はぎとらるる痕跡か 
その鎮圧は終わらねど
ひふみよいむな 
 宵の手を蹴り
ひふみよいむな
 いざ飛翔
名を呼ぶ白色銀の円形ロール
疾走のキャミソール
黒い帽子に白色銀の酸化銅
うるわしやうるわしや
黒い二点のうるわしや
脱力感の三角形
かかる係累などて断たんや
身軽のゆえの微量の重み
くわえ下して発心す
己が食すは某による生産物
その原料もまた某かによる生産物
労働交換価値循環
身につく被服も生産者販売者
印度中国朝鮮半島伝播せし
追われ絡むわ糸の縁
かかる網目にまきこまれ
犀の角とはなりえんわ
山へ趣き晦渋に
読経三昧したよとて
草木国土も因果の項
解脱の道もあるまじや
孤独足り得ぬ性の中
解脱の道もあるまじや
歯を剥き出した一角獣にたおやかな羽虫
共生の祭りと逆転の喜びに預けた桜のひるがえすひるがえす
春風が吹き込む穴蔵で
極めて縮みすりきれた再生紙はエコロジーの満足でそれもまた夢の島へと運びゆく
春風が吹き込む穴蔵で
碧厳録に没入し未来時制で語るロマンはランボーを愛するダダイストの額に刻まれているだろう
刻まれたる我が理性反復たるまこのまどろみをその白い要塞で葬式を待ち春風が吹き込む穴蔵で夜明けの空気を固定する
世界の記述よ私の記述よ時間と存在とが本質を同時にたもちしかも溶け合い認識の狭間に産み落とされた混沌たる一切の結実よ光でありあなたの頬でありたおやかな筆の運びと化粧の大成であり凡夫の行く末であり学徒の故郷である……

春風が吹き込む穴蔵で
我々はうぬが背をもろもろの太陽が投げかける発光体で浸す
それは色とりどりでしかも近しく観客席を照らす戦利品である
春風が吹き込む穴蔵で
意識の構造を吟味してゆくよりも
春風が吹き込む穴蔵で
たおやめぶりの振動にまどろみをあずける

豆腐

2003年12月18日 明晰な口語詩
豆腐ですか 豆腐ですね
買うのはこれで三度目ですよ
三度目ですか 越しますか
三度越したらカビ生えますよ
朝の豆腐も昼の豆腐も
おのおのおのおの
三度目ですか もっとですか
豆腐買いますか 常食ですか
右の店で買い上の店で買い
豆腐屋の主人に銭が悪いと足らんと
しぶられますよ
豆腐も一歩手前にまいりましょうよ
豆腐買いましたか また買いました
絹ごし木綿どちらも結構
豆腐は豆腐じゃございませんか
豆腐買って豆腐暮らし

監獄説教

2003年12月16日 明晰な口語詩
安逸を避けるため囚人に告ぐ。
自責を不正の代価とみなすその思考を不正とみなすその思考をその思考をと無限後退をつづけるこの有害なるものにおちいることは自責の性であるがそれは不正の代価ではない。
むしろ自らをつなぐ鎖のたもと腹に刺さった矢を抜き取り押しながす嵐を乗りこなし、自責と高慢とを共に離れて平安であれ。
さすれば不正の代価まことのしなる正義の手足を頭脳をかんばせを得るだろう。
自責と高慢とを離れるために努力策励し怠ることなく焦燥にかられることなくおのが手枷足枷を断ち切ってリアのごとく高潔であれ。
その身にまつわりついた自責のそそぐ塵芥、その厚さを嘆くより振払う術を学び誠実であれ。
おのが不正をその胸にとどめ猛々しい風神のように優美な学問のように自らを打つ手をとどめて勇敢であれ。
囚人 自責は不正の代価にならずただ貪りと怠りの証しなり。正義もて支払う他は未知の国が訪問以上に術なきことぞ。

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