[葡萄酒の潤滑油...]

2006年5月14日
葡萄酒の潤滑油
魔術的な省察の狭間より
名もないこの躍動が時計のねじを回転させてくれたなら
理性も柔らかなクッションになり
精神も零落するだろう
ロゴスが頭蓋にミシンで縫い込まれ
固いねじで陽光の落葉を突き刺すなら
北極星の呼び声も胃袋に沈むだろう
身体の夜が足をなずませ
屠殺された心臓が足下で脈打つのが見えるだろうか
私は見る
緑色の脳髄が駅の中で小売りにされ
つぶれた胆汁が市民の愛撫に絶叫する様を
格子の前に涙を流する笑劇の醜さを
なおも見る
街全体が星の砂金に包まれ
野良犬の骨を胸に埋め込む様を
はっきりと私は見る
雅な手付きで夜の腐臭を吹き込む令嬢を
ヌースの血脈からほとばしる土塊を
私は私のうちに知覚する
もの言わぬ鉛の道に立ちふさがる雑草の群を
理解し得ぬ行く先、宙づりの死体、
どれもが馬を駆らせ愚鈍を罵る傲慢の石塚
私は感覚など頼りにしないそれは知性の根源でありまた思考の道具でもあろうが
経験主義の誤謬を信じてはならない
辻占いやカラスの襲撃に苦い血を流してはならない
そしてみだりに自らを名乗ってはならない
名は肉体を切り裂き魂を封じる

だが名辞がなければこの交差点で催される群像劇も
一枚の無差別にすぎない
そしてスピーカーからはたまさかの刃が生じる
女の靴音が喧噪を昂らせ私の背骨を折り曲げる
地下劇場の煙の影も竹林精舎の仏弟子も
自らを名乗ることもできず
魂を切り裂くこともできず
自我の贅肉に縛られ星をのぞむこともできない
無差別よそれは限りなく大気に近く一切の構成要素
精神も肉体もともに大気に溶けされば
風でできたエアリエル、おまえのように霧へと溶けさることができたなら
ダンボールの予言者よ、私はおまえをこの目に見る
未知のことがらをビル明かりに消し去ってくれ
私は眠りをまちのぞむ

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