願うべきものが正義を知らぬ時も、私は光り輝く言葉の群れを愛すことができよう。しかしながら思いとどまる。とどまることなく分裂し、新たに発見されたこの元素を知ろうとは。大地に存在しつづけながらヴェールの向こうに隔てられ、しかも日々の糧食ほどに馴染みぶかくまた会議以上に公共的な元素を。
 それは重々しく回転し、海に染み込んだ酸素と激しく反応を起こすものらしい……いや、伝聞ではなく確かにそれが吹き出す泡や攻撃的な声は甚だしい。いかなる言葉も真偽が問われうる。だが新たな化学反応は真偽を問われることはない。まして善悪がどうして問われるのか。およそ信じ難い。こうしてただ知覚の次元でのみ語られることが永遠に行われて来たというのか。
 この元素は炎を玉虫色にする。時には透明の炎となって陽光に溶け込み姿を隠し、またある時には漆黒となって世界に深淵を作り出す。酸素との諍いで時には真紅ともなり、退屈なやりとりに青ざめもする。これは果たして私の網膜が原因なのか、今もってわからない。
 かかる元素の不気味さはそれを大地が抱いているということだ。真珠のけばけばしさを私は憎むことができるが、それは大地に存在し得ないからである。かの元素は不気味である。正義も身体もすべてこれによって成立しているかもしれないからである。
 私もかの元素の名を知っておりすでにかのものは愛欲と呼ばれている。

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