郷愁

2004年3月14日 明晰な口語詩
奥羽の背骨は伏せたる老体
顔面を覆いすなわち人払い
むせび泣きに湿った雪の手のひらは次々と咲き誇る艱難辛苦と舞踏するばかり
東のやませは線路の中に香る苦虫でありモダンの通過で雲散霧消の影

臨む背骨をわたしは思い出す 西のかつてに豪雪と酷暑の凪となった心痛があることを 
農民の手練は朝が掻き乱す井戸水の黒点と相違わぬことを
わたしはまた思い出す 広大な舌を持つ北上の唇と静寂のため息を 
それは柔和な信仰のように
伏せたる老体の悲嘆が青大将を木陰に閃き香る水音を成就することを
混じりあう無数の空気に植物性の優美が胸を開き舞踏を許して瞼を染めることを

たとえ人権の刃が牢獄を水平に爆破しようとしても
木々の貪欲な逆接の渦が柔和な信仰のように混沌と雪水を注ぎ
赤い空に無為の軌道を描くいなごの群れも
白色の眠りを無彩の権化に落下することはない
わたしは語る

震える背骨は夕暮れに遠く
存在論の形式さえも拒む夜の侵食に柔和を知るのだ

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