わろし

独文学者諸氏に告ぐ
私の名は関係代名詞
庇護されるその前身は先行詞
すでにカンマの弾丸はうたれた
否定語をもって私は過去を修飾する

フランス詩人諸君に告ぐ
私の名はゴシック・ノベル
アフリカ行きの船は舞台の屋敷
手持ちの恐れは充填を済ませた
武器商人のたしなみでもって狂女をおめにかけよう

戦後作家門弟に告ぐ
私の名は母音五種
子音をそがれた音素の群れ

つなぎとめるはナルシスとしての罪悪感
堆積物を失った我々の響きは品川駅に吐瀉される
一夜の現実あらたにし